A、B、C、E肝炎ウイルス以外で、肝炎の原因となる肝炎ウイルスとして、D型肝炎ウイルス(HDV)があります。肝炎ウイルス以外では、頻度が高く、肝炎が主兆候を示すEpstein‐Barrウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)があります。

D型肝炎ウイルス

HDVは増殖のためB型肝炎ウイルス(HBV)を必要とするRNAウイルスです。HDVはHBVと同時に、または重複した時に感染が成立します。HDVは感染者の血液や体液を介して感染します。HDVの分布には地域差があり、地中海地方や北欧、中東、アフリカ北東部で多く、日本ではまれです。HDVへの感染はB型肝炎ワクチンの接種によって予防することができます。

EBウイルス

EBVは思春期から若年青年層に好発する伝染性単核症という病気の主要な原因です。唾液を介して主に感染し、kissing diseaseとも呼ばれています。伝染性単核症は4〜6週間の潜伏期を経て発熱、咽頭扁桃炎、頚部リンパ節腫脹、発疹、異型リンパ球増加、肝炎による肝機能異常、肝脾腫などを示します。肝炎はほとんどの例で認められ、中程度のALTの上昇がみられますが、黄疸を伴うことはまれです。

サイトメガロウイルス

CMVは唾液、尿、血液などの体液を介して感染します。通常、CMVは幼小児期に不顕性に感染し、宿主に潜伏感染し、免疫抑制状態下で再活性化し、未熟児、移植後患者、免疫不全患者などでCMV感染症を発症します。免疫学的に正常であっても肝炎や伝染性単核症などを発症する場合があります。

その他ウイルス

上記のEBVとCMVはヘルペスウイルス科に属するウイルスですが、同科に属する単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型も肝炎の原因になります。アデノウイルス、コクサッキーウイルスなども肝炎の原因となります。