肝炎ウイルスの1つのE型肝炎ウイルス(HEV)により引き起こされる急性ウイルス肝炎をE型肝炎とよんでいます。

疫学

流行地域は主にアジア、アフリカにおける発展途上国が多いとされていますが、ヨーロッパ、アメリカや日本などにおいても散発的に発生します。日本においては年間50人前後の発生報告があり、以前は輸入感染といわれていましたが、近年では日本国内で渡航歴のない人も報告されています。HEVの遺伝子型によっては人と動物の両方に感染する人獣共通感染症の原因になります。

感染経路

糞便から排泄されたHEVで汚染された食物や水を摂取することで感染が成立する糞口感染やブタ、シカ、イノシシなどの動物の生刺しやレバ刺しなどの喫食による経口感染が主たる感染経路です。ワクチンはまだ開発されていません。

診断

HEVに感染後、平均6週間の潜伏期を経て、E型急性肝炎を発症します。症状はA型急性肝炎と似ていて、発熱、倦怠感などに続いて血中のAST、ALTが上昇します。食欲不振や嘔吐などの消化器症状を伴い、黄疸や肝腫大などが出現します。E型急性肝炎の診断は、血中のIgA-HEV抗体陽性を確認します。感染症法では4類感染症に分類され、医師は保健所に届け出る必要があります。

経過

多くは、対症療法で回復し、慢性化せず、予後は良好です。E型肝炎の重症化の頻度はA型肝炎に比べて高く、特に妊婦では劇症肝炎の割合が高く、致死率は20%にも達するとされています。