腹水のある進行した肝硬変などに発生した、腎炎のような腎臓実質(腎血管以外の腎臓)の障害のない、進行性の腎機能障害を肝腎症候群(Hepatorenal syndrome: HRS)とよんでいます。

発生機序

低アルブミン血症および門脈圧亢進に伴う相対的な有効循環血液量の減少から来る腎臓の血管の収縮が本態とされています。腎臓の血流低下をきたした結果、腎機能の著しい低下が惹起されます。この腎機能障害は、感染、エンドトキシン血症の出現でさらに進行するとされます。本病態は慢性に進行した肝硬変にみられる場合と、劇症肝炎にみられる場合の二通りあります。

診断基準

腹水を伴う肝硬変または劇症肝炎で、腎臓機能の指標の血清クレアチニン値が1.5mg/dlを超える、2日以上の利尿剤の中止とアルブミン投与によっても血清クレアチニン値が改善しない、ショック状態にない、腎毒性のある薬物が使用されていない、尿たんぱく500mg/日以上や顕微的血尿や腎臓の形態的異常など腎臓に実質障害が認められない時に肝腎症候群と診断されます。

経過

血清クレアチニン値が2週間以内に倍増かつ2.5mg/dl以上となるものは1型肝腎候群で、それ以外は2型とします。細菌感染症、手術あるいは急性アルコール性肝炎などに伴う1型では腎不全は通常急速に進行し、致死的となります。利尿剤でコントロールできない腹水が長期に持続し、腎障害を伴う2型は、軽度で安定した腎機能不全となります。

治療

1型肝腎症候群では肝移植も治療法として受け入れられており、経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)は一部で有望視されています。