潜在性感染

急性肝炎が治癒するとB型肝炎ウイルス(HBV) は血中から排除されますが、肝細胞や末梢血単核球などには長期間残存することが明らかになりました。血中HBs 抗原陰性でHBV DNA が血中または組織中に検出される状態を潜在性(occult)HBV 感染と呼んでいます。感染者を特定するためには、HBc抗体およびHBs抗体の測定が必要となります。免疫抑制剤・化学療法によりoccult HBV感染者は肝炎を発症し、劇症化することもあります。

プレコア変異

HBVキャリアの多くは10歳代後半から20歳代に肝炎を発症し、その中の85~90%はHBe抗原が消失し、HBe抗体が出現(セロコンバージョン)します。このHBe抗原陰性化に関わるのがプレコアおよびコアプロモーター領域の遺伝子の変異です。プレコアの変異では前駆体の翻訳が障害され、コアプロモーターの変異では転写に障害が生じてHBe抗原の合成が阻害されます。

薬剤耐性変異

HBVはDNAウイルスですが、一度細胞質にプレゲノムRNAを作り、RNAからDNAを逆転写し複製するので、ほかのDNAウイルスより遺伝子の変異がおこります。現在、HBV感染の治療にウイルスの増殖を抑える核酸アナログ製剤という経口薬が多く使われていますが、長期間服用すると、薬が効かない耐性変異ウイルスが現れ、肝炎を再発することがあります。その場合には、他の製剤に切り替え、または併用することで、治療効果が得られます。

発がん機序

HBVの感染に伴い、肝細胞のヒトゲノムにHBVゲノムの組み込みが起こり、肝細胞内において、組み込み部位周辺のヒトゲノムが不安定となり、がん関連遺伝子の発現変化を引き起こし、肝がんが発生すると考えられています。また、発がんの重要な因子として、HBV が産生するウイルスたんぱくHBxが知られていますが、このHBxが組み込み部位周辺のヒトゲノムに影響を与える可能性が示されてきています。