発見の歴史

1940年後半には経口的に感染する肝炎をA型、血液を介して感染する肝炎をB型として区別するようになっていました。1973年米国の国立衛生研究所のFeinstoneらは電子顕微鏡を使って感染者の糞便にA型肝炎ウイルス(HAV)を発見しました。1975年に米国のProvostらはマーモセットの培養肝細胞をHAVに感染させることに成功し、ワクチン製造への道を確立しました。

ウイルスの構造

HAVは外被(envelope)を持たない直径27nmの正20面体の小型球状粒子です。HAV遺伝子は約7,500塩基からなる一本鎖のRNAで、ピコルナウイルス科のヘパトウイルス属に分類されています。HAVは酸に強く 、アルコールなどの有機溶媒に耐性で、不活化には十分な加熱(85℃で1分以上)、紫外線照射、塩素処理などが必要です。

感染経路

糞便から排泄されたHAVで汚染された食物や水を摂取することによる糞口感染やカキなどの魚介類の生食などによる経口感染が主たる感染経路です。衛生環境が改善し、大規模な集団発生はみられなくなりましたが、輸入食料品からの感染や海外渡航者の感染がみられています。1995年から国産の不活化ワクチンが使えるようになっています。

発症する肝臓病

HAVに感染後、平均4週間の潜伏期を経て、A型急性肝炎を発症します。発熱、倦怠感などに続いてAST、ALTが上昇します。食欲不振や嘔吐などの消化器症状を伴い、黄疸や肝腫大などが出現します。小児では多くは無症状や軽症です。高齢者などではまれに劇症肝炎を発症して死に至ることがありますが、対症療法で1〜2カ月の経過の後に回復し、慢性化せず、予後は良好です。A型急性肝炎の診断は、血中のIgM-HAV抗体陽性を確認します。診断や経過については、(肝臓病)の「43)A型肝炎とは?」でも述べました。