肝血管腫とは、肝臓内の異常に増殖した細い血管が絡み合ってできた良性の腫瘍です。

病態

肝血管腫は肝臓の良性の腫瘍の中で最も頻度が高く、中高年、女性、肝右葉に多くみられます。肝臓には大小多くの血管が集まっているため、血管の一部が異常に増殖して絡み合って塊になりやすく、スポンジのような構造をした海綿状の腫瘍となります。発症の原因は明らかではありませんが、女性に多いので女性ホルモンの関与があるとも考えられています。

症状

多くは無性状で、健診や人間ドックなどの腹部超音波(エコー)検査で発見されます。大きな血管腫では、周辺の臓器の圧排、血管腫内の出血、血管腫内に大量の血栓が生じて血小板や凝固因子が消費される播種性血管内凝固症候群(DIC)による出血などの症状、血管腫の破裂などにより腹部不快感や腹痛などの症状が現れることがあります。

診断

多くは腹部超音波検査で見つかりますが、肝がんとの鑑別するために造影CTやMRI検査を行います。肝血管腫は造影CTやMRI検査で特徴的な像がでます。血管腫はがん化することはなく、大部分は経過による大きさの変化はないと言われていますが、腹部超音波検査で経過観察することが推奨されます。

治療

大部分は無症状で経過し、治療の必要はありません。大きな血管腫で腹部不快感や腹痛などの症状が現れたり、自然あるいは外傷性破裂がみられた時には、手術の適応となります。大きさが10cm を越える血管腫では、破裂の危険性が高くなるので、注意が必要と言われています。